積み上げた巡航力を一段上の強度で試す 〜静岡お茶OWS 2026〜

2026年6月14日、静岡お茶OWS。

南紀田辺OWSでは、LT1中心で積み上げてきた巡航力に一定の手応えを感じることができた。

次に確認したかったのは、その巡航力をもう一段高い強度で維持できるかどうかだった。

今回の目標は、心拍数150前後の強度でレース全体を泳ぎ続けること。

順位やタイムではなく、自分の巡航力の現在地を確かめるためのレースだった。

追われる立場で迎えた静岡お茶OWS

静岡お茶OWSではトライアルの部で出場した。

エントリーリストを確認したところ、私はトライアル出場者の中で最年長だった。

スタートは一般の部より5分早い。

一般の部には30代、40代の実力者も多く出場している。

その中には、共に日本選手権出場を目指す40代男性のTさんもいた。

南紀田辺OWSでのタイム差を考えると、どこまで逃げ切れるのか。

それも今回の興味の一つだった。

もちろん本来の目的は別にある。

南紀田辺OWSでは、LT1中心で積み上げてきた巡航力に一定の手応えを感じることができた。

今回は、その一段上の強度で泳ぎ続けられるかを確認したい。

目標は心拍数150前後。

限界近くまで追い込むのではなく、少し余裕を残しながらもレースペースに近い強度で巡航し続けることだった。

ただ、レースとなれば気持ちは揺れる。

5分後にスタートする一般選手たち。

どのタイミングで追いつかれるのか。

あるいは最後まで逃げ切れるのか。

特にTさんとの差は気になっていた。

南紀田辺OWSでは約5分差。

単純に考えれば、ラスト1周あたりまでは勝負になるのではないか。

そんな期待も少しだけ持ちながらスタートラインに立った。

視認と巡航力のバランス

静岡お茶OWSのコースは1周1.25km。

1辺がおよそ400mあり、ブイとブイの間隔が長い。

レースが始まってすぐに、その難しさを感じた。

ブイが小さい。

しかもブイは黄色。

ライフガードの艇やスタッフの装備も黄色。

視界の中をライフガードが横切ることもあり、一瞬の前方確認では目標となるブイを見つけられないことがあった。

私は呼吸のタイミングに合わせて前方確認を行うことが多い。

しかしブイが見つからない。

するともう一度確認する。

さらに確認する。

自然とヘッドアップの回数が増えていった。

ヘッドアップが増えると身体が後傾になる。

後傾になるとスピードが乗らない。

巡航力を維持したいのに、自分でブレーキをかけているような状態だった。

もちろん前方には選手がいる。

その選手についていけば良いとも思う。

しかし、その選手が本当に正しいコースを泳いでいるのか分からない。

潮の影響を受けて大きく流されている可能性もある。

そう考えると、どうしても自分の目で確認したくなってしまう。

レース後に振り返ると、少し考えさせられた。

もちろん大きくコースを外れるのは避けなければならない。

しかしOWSでは、数メートルのコースロスを防ぐために何度もヘッドアップを繰り返し、巡航力そのものを失ってしまうこともある。

正確なコース取りを優先するのか。

多少の誤差は受け入れて巡航力を維持するのか。

静岡お茶OWSは、視認と巡航力のバランスについて考えさせられるレースだった。

追いつかれた時に見えたもの

2周回を終えた直後、一般の部で出場していた女子選手にLAPされた。

速い。

以前から交流のある選手だったため泳ぎにも注目していた。

ピッチが速い。

それでいて力任せではない。

その選手はバランスクロールの指導も行っている。

バランスクロールは、その名のとおり身体のバランスを利用しながら泳ぐ考え方だ。

レッスンでは、ゆっくりとした動きの中で自分の身体の使い方を認識し、無駄な力を使わずに前へ進む感覚を身につけていく。

私も以前レッスンを受けたことがある。

肩関節だけを無理に前へ伸ばさず、身体の傾きや体重移動を利用して前へ進む泳ぎだ。

しかし実際のレースでは、その技術に高いピッチとスピードが加わる。

ドラフティングで後方につこうとも思ったが、ついていくことすらできなかった。

こんなにも差があるのか。

正直そう感じた。

さらに3周回最初のブイ付近で、Tさんに追いつかれた。

後方にはさらに2名の選手を引き連れている。

速い。

泳ぎの特徴は圧倒的なプルの強さだった。

レース後に話を聞くと、腕の力だけで泳ぐとすぐに乳酸が溜まり、水をかけなくなるという。

そのため、体幹や広背筋を使いながら全身で推進力を生み出しているとのことだった。

私も身体の連動は意識している。

しかし、同じような推進力はまだ生み出せていない。

そして何より、自ら先頭に立ち、後続を引き連れて前へ進んでいく強さがあった。

身体的な能力だけではない。

レースを支配しようとする積極性や自信も含めて、今の私とはまだ差があると感じた。

ただ、不思議と悲観はしなかった。

むしろ目指すべき姿がより明確になった。

Tさんはライバルというより、この年代で同じ目標を目指す同志である。

一緒に練習をすればアドバイスをいただける。

だからこそ、今は少しでもその差を縮めたい。

追いつかれたことで、自分に足りない能力が見えた。

それは悔しさではなく、次のオフシーズンで積み上げるべき課題だった。

海と戦わず、海を楽しむ

3周回に入る頃、潮の流れが変わり始めた。

干潮から上げ潮へ。

沖へ向かう区間では、進んでいるつもりでも押し戻される感覚がある。

時折、大きなうねりで身体が持ち上げられる。

競泳だけを経験してきた選手であれば、泳ぎづらさを感じる場面かもしれない。

しかし私は、こうした海の変化が嫌いではない。

むしろ身体が持ち上げられる僅かな瞬間に力を抜き、呼吸を整えることもできる。

OWS経験の浅い選手たちの中には、潮に流されたり、リズムを崩したりしている選手もいた。

そんな中でも私は比較的平常心を保つことができていたと思う。

そして静岡お茶OWSには、もう一つ特徴があった。

海藻だ。

コースの一部には海藻が多く漂うエリアがあり、泳いでいると腕や身体に絡みついてくる。

選手たちによって引きちぎられた海藻は水中を漂い、ときには首に引っ掛かる。

まるでハワイのレイを首に掛けられたような状態だ。

外そうとしてもなかなか取れない。

競技として考えれば厄介なアクシデントだろう。

それでも不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

海藻が絡む。

潮が変わる。

うねりで身体が持ち上がる。

プールでは絶対に起こらない出来事ばかりだ。

そんな予測できない環境の中で泳ぐことこそ、OWSの魅力なのかもしれない。

ラスト1周で見つけた課題

ラスト1周に入る頃、一人の女子トライアル選手と一緒になった。

小柄な選手だった。

パワーで押し切るタイプには見えない。

しかし泳ぎを見ていると速い。

特に印象的だったのは、腕を前へ運ぶ動きだった。

水を強くかくというよりも、身体のバランスと体重移動を利用して加速しているように見える。

そして何より、後半になるほどペースが上がっていた。

前半は私よりゆっくり泳いでいたと思う。

しかしラスト1周になると明らかにペースが違う。

少しずつ差が広がっていく。

実は、この展開こそ私が今回目指していたレースだった。

前半を抑え、後半にペースを上げる。

南紀田辺OWSで確認した巡航力を土台に、一段高い強度でも終盤まで維持できるかを試していた。

大きく失速することはなかった。

しかし、その選手のように明確にペースを上げることもできなかった。

ゴール後にリザルトを確認すると、その選手は私より約1分早くゴールしていた。

私のタイムは1時間13分42秒。

わずか1.25km×4周のレースでも、1分という差は決して小さくない。

今回のレースで確認できたのは、巡航力が向上していることだった。

一方で、レース終盤にもう一段階ペースを引き上げる能力はまだ不足している。

スタート直後の積極性。

勝負どころでの加速。

そしてゴールスプリント。

ラスト1周で見えたのは、今後取り組むべき課題だった。

静岡お茶OWSで得た答え

結果は1時間13分42秒。

海況やコース設定が異なるため、南紀田辺OWSとの単純な比較はできない。

それでも結果としては約1分タイムを短縮することができた。

海藻エリアでの減速や潮の影響を考えれば、一定の前進はあったと思う。

もちろん目標としている1時間10分にはまだ届かない。

しかし今回のレースでは、できなかったことよりも、できたことに目を向けたい。

南紀田辺OWSではLT1中心で積み上げてきた巡航力を確認した。

静岡お茶OWSでは、その一段上の強度で泳ぐことに挑戦した。

心拍数150前後。

限界まで追い込むのではなく、レースペースに近い強度で巡航し続けることを目標とした。

その目標は概ね達成できたのではないかと思う。

途中で大きく失速することはなかった。

潮や海藻、視認の難しさにも対応しながら最後まで泳ぎ続けることができた。

一方で課題も見えた。

レース後にTさんから、

「もっとスタートから積極的に入っても良い」

というアドバイスをいただいた。

確かに私は巡航スピードを守ることを優先し過ぎていたのかもしれない。

後半に失速することへの恐怖がある。

だから前半で攻め切れない。

ゴールスプリントも同じだ。

周囲に競る選手がいなければ、どこかで妥協してしまう。

今回のレースで確認できたのは、巡航力の向上だけではない。

巡航力を維持する段階から、その巡航力を使ってレースを組み立てる段階へ進む必要があるということだった。

スタート。

勝負どころでの加速。

そしてゴールスプリント。

静岡お茶OWSは、自分に足りない能力を教えてくれたレースだった。

そして同時に、その課題に取り組む準備が少しずつ整ってきていることを確認できたレースでもあった。

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