なぜ、同じように泳いでいるつもりでも、楽に泳げる人とすぐに疲れてしまう人がいるのでしょうか。OWSでは、その違いが泳力だけで決まるとは限りません。
水中では常に、身体を浮かせる「浮力」と、体が水中へ沈もうとする「重力」が働いています。
このバランスによって、水中での姿勢は自然に決まります。
脚が沈むのも、姿勢が崩れるのも、力が足りないからではありません。
水中姿勢は力ではなく、浮力と重力のバランスで決まっています。
この記事では、浮力と重力の関係から、水中で身体の姿勢がどのように決まるのかを整理します。
この仕組みを理解することで、無駄な力を使わずに長く泳ぎ続けるための姿勢が見えてきます。
なぜ脚が沈むのか|キックでは解決できない理由

脚が沈んでしまうと、多くの人はキックを強く打とうとします。
しかし、いくらキックを頑張っても脚は浮かず、前にも進みにくい。
そのうえ疲れてしまい、長く泳ぎ続けることができません。
「なんでだろう?」
そう感じたことはないでしょうか。
一方で、子どもたちは力んでいる様子もなく、スイスイと前に進んでいきます。
「やっぱり子どもの頃から水泳をやっていないと無理なのか」
そう思ってしまうかもしれません。
しかし、そんなことはありません。
水中は、地面のように身体を支える“支点”がない環境です。
そのため、力で姿勢を作ろうとしても安定せず、かえってバランスを崩してしまいます。
子どもは、もともと浮きやすい状態から水泳を始め、自然と水中でのバランス感覚を身につけていきます。
成長とともに筋肉量が増え、体の構造も変化していきますが、その都度バランスを調整しながら泳ぎを覚えています。
つまり、「子どもだから泳げる」のではなく、バランスを取る経験を積んでいるだけです。
大人でも同じです。
自分の身体と向き合い、水中でのバランスを理解し、整えることができれば、無駄な力を使わずに楽に泳ぐことは十分可能です。
水中では身体が回転しようとする|浮力と重力の関係
水中では、身体を浮かせる「浮力」と、体を沈めようとする「重力」が常に働いています。
浮力は主に空気を多く含む胸のあたりに作用し、重力は筋肉量の多いおへそから脚にかけて強く働きます。
この2つの作用点(浮心と重心)は一致していないため、身体には回転しようとする力が生じます。
イメージとしては、シーソーのように
胸が浮き、脚が沈もうとする動きです。
この回転は特別なことではなく、水中にいる限り常に起きています。
そのため、何も意識しないと上半身は浮き、下半身は沈みやすくなります。
さらに、この状態で呼吸の際に頭が上がると、重心が後ろへ移動し、回転が強くなります。
その結果、上半身が起き上がり、下半身がさらに沈みやすくなります。
ここで重要なのは、脚が沈む原因は脚そのものではないということです。
キックで持ち上げようとしても、この回転が解決しなければ姿勢は安定しません。
また、体幹を固めて姿勢を維持しようとしても、浮力とのバランスが崩れ、かえって沈みやすくなることがあります。
水中姿勢は、自分の力で無理に作るものではなく、浮力と重力のバランスの中で自然に決まっています。
まずは、この「身体は常に回転しようとしている」という前提を理解することが、水中姿勢を安定させるための第一歩になります。
姿勢は“作る”のではなく“整える”
力で支えるほど、バランスは崩れる
姿勢を良くしようとして、力で身体を支えようとすると、かえって沈みやすくなります。
プルブイを使って泳いだとき、いつもより楽に前に進む感覚はないでしょうか。
脚が沈まず、キックを使わなくても姿勢が安定し、スムーズに進める感覚を感じたことがあると思います。
しかしプルブイは、「足が使えないから上半身を鍛える練習」と捉えられることも多く、足かせのように感じている人も少なくありません。
実際にはその逆で、プルブイは脚が沈まない状態を作ることで、水中での姿勢が整った状態を体感させてくれる道具です。
つまり、楽に進めるのは腕の力が強くなったからではなく、姿勢が整い、無駄な抵抗が減っているためです。
逆に、頑張って泳ごうとするほど身体が沈んでしまう感覚もあると思います。
これは力んだことでバランスが崩れている状態です。
水中では姿勢は自分の力で作るものではなく、浮力と重力のバランスによって自然に決まっています。
大切なのは、無理に姿勢を作ろうとすることではありません。
力を抜いたときに身体がどうなるのか、頭を上げたときにどこが沈むのか。
そうした変化を感じ取ることで、水の中で楽に進める状態に近づいていきます。
この状態が、水の中で無駄な力を使わずに泳げている状態です。
楽に泳げる姿勢を作るためのポイント
無理に姿勢を作ろうとするのではなく、「水に乗る」感覚を意識します。
そのためのポイントは次のとおりです。
・胸に軽く圧力をかけるイメージを持つ
頭を下げるのではなく、身体の重さを少し前に移す感覚です。
・腕を前に素早く運び、身体の重さを前に持ってくる
水から上げた腕をゆっくりではなく、少し早く前に出すことでバランスが整いやすくなります。
・前に伸ばした腕と胸に体重を預ける
身体を支えようとするのではなく、水に乗るような感覚を持ちます。
・水中を滑るイメージを持つ
伸ばした腕と同じ側の胸に体重を預けると、身体が水に乗ったような安定した状態になります。その状態のまま前に進むことで、水の中を滑るような感覚が生まれます。
まとめ
水泳では、前へ進む力ばかりに意識が向きやすいですが、水中では常に浮力と重力が働き、そのバランスによって姿勢が決まっています。
脚が沈むのはキックが弱いからではなく、身体のバランスが崩れているためです。
無理に姿勢を作ろうとして力を使うほど、かえって泳ぎにくくなります。
姿勢は力ではなく、バランスで決まります。
大切なのは、水の中で自分の身体がどうなっているのかを感じることです。
プール練習では、アップ後にバランス感覚を確認する時間を作り、その感覚を持ったまま泳ぎ込みに入ることで、練習の質は大きく変わります。
まずは一度、力を抜いて泳いだときの感覚を確かめてみてください。

