OWSのトレーニングを続けていると、「VO2max」という言葉を耳にする機会があります。
競泳の教科書やトレーニング理論では、VO2maxの向上が重要だと説明されています。
また、タバタ式トレーニングのような高強度トレーニングによって、スピードと持久力の両方を高められるという話を聞いたことがある方もいるでしょう。
では、VO2maxが高ければOWSでも速く泳げるのでしょうか。
また、限られた練習時間の中で、一般選手やトライアル選手はVO2maxの向上を優先するべきなのでしょうか。
私自身も長い間、その答えを探してきました。
今回はVO2maxの意味を整理しながら、OWS選手にとって本当に重要な能力とは何かを考えてみたいと思います。
VO2max(最大酸素摂取量)とは何か
私は長い間、VO2maxを「最高出力を出せる能力」だと思っていました。
しかし正確には少し違います。
VO2maxとは、身体が運動中に取り込み、利用できる酸素量の上限を示した指標です。
酸素は肺で取り込まれ、心臓によって全身へ運ばれ、最終的に筋肉で利用されます。
VO2maxは、その一連の流れの能力を表しています。
VO2maxが高い選手は、より多くの酸素を利用しながら運動できるため、高い強度でも余裕を持って動き続けることができます。
例えば、同じペースで泳いでいても、VO2maxが高い選手の方が呼吸が楽に感じられる場合があります。
つまり、VO2maxが高いほど「速いペースを維持する余裕」が大きくなります。
そのため、競泳や持久系スポーツではVO2maxは重要な能力の一つとされています。
しかし、ここで一つ疑問があります。
VO2maxが高ければ、OWSでも速く泳げるのでしょうか。
確かに、VO2maxが高い選手ほど速いペースに余裕を持つことができます。
しかし、OWSではVO2maxの高さだけで巡航ペースが決まるわけではありません。
では、OWSで本当に重要な能力とは何なのでしょうか。

OWSで本当に重要な能力とは何か
VO2maxが高いほど速いペースでも余裕を持って泳げるのであれば、
VO2maxを高め続ければOWSも速くなるのでしょうか。
しかし、実際のレースを振り返ると少し違うように感じます。
OWSの5kmや10kmでは、スタート直後やブイ回り、ゴールスプリントを除けば、多くの時間を一定のペースで泳ぎ続けます。
つまり、レースの大部分を占めるのは最高速度ではなく、巡航速度です。
そのためOWSでは、「どれだけ速く泳げるか」よりも、「どれだけ高いペースを維持し続けられるか」が重要になります。
一般選手の場合、この巡航ペースはLT1領域に近いことが多いでしょう。
一方で、トライアル選手や日本選手権レベルの選手では、LT2に近い強度で巡航している場合もあります。
レベルによって強度は異なりますが、共通しているのは巡航力がレースの土台になっていることです。
もちろんVO2maxは重要な能力です。
しかし、VO2maxだけでOWSの結果が決まるわけではありません。
実際には、巡航力、フォームの再現性、レース展開への対応力など、多くの能力が組み合わさって結果につながります。
そのため、巡航力を高めるトレーニングが重要になります。
その理由は、OWSで最も長い時間使う能力こそ、巡航力だと考えているからです。

スピード練習は何のために行うのか
巡航力が重要だからといって、スピード練習が不要というわけではありません。
OWSのレースでは、多くの時間を巡航ペースで泳ぎます。
しかし、レース中には短時間だけ高い出力が求められる場面があります。
例えば、
- スタート直後の位置取り
- ブイ回りの加速
- 集団のペースアップへの対応
- ゴールスプリント
などです。
このような場面では、高いVO2maxや無酸素能力が武器になります。
そのため、スピード練習やVO2maxトレーニングには十分な価値があります。
特にトライアル選手や日本選手権レベルの選手では、レース中のペース変化への対応力が順位に大きく影響します。
一方で、一般選手の場合は注意も必要です。
スピード練習は達成感があり、短時間で実施できるため取り組みやすいトレーニングです。
しかし、5kmや10kmのレースで失速する原因が巡航力不足である場合、
スピード練習ばかりを行っても期待した効果は得られません。
重要なのは、スピード練習を主役にするのではなく、自分のレベルや目的に応じて位置付けることです。
私は、スピード練習やVO2maxトレーニングは、
OWSで最も重要な巡航力を支える補助能力だと考えています。
短時間高強度トレーニングだけで巡航力は作れるのか
短時間高強度トレーニングの代表例としてタバタ式トレーニングがあります。
20秒間の全力運動と10秒間の休息を8回繰り返す高強度インターバルトレーニングです。
合計4分という短時間で実施できるため、VO2max(最大酸素摂取量)や無酸素能力の向上が期待されています。
水泳では、25mや50mのダッシュを短い休息で繰り返す形で応用されることがあります。
仕事や家庭で練習時間が限られる社会人スイマーにとって、「短時間で効果が得られる」という大きな魅力があります。
ただし、本来のタバタ式トレーニングは限界に近い強度で行うことが前提です。
水泳では自分の出力を客観的に把握しにくいため、タイム計測やコーチによる管理がなければ、十分な強度に達していない場合もあります。
また、高強度トレーニングであるため、一般的には週2〜3回程度の実施が目安とされています。
では、このような短時間高強度トレーニングだけで、OWSに必要な巡航力は作れるのでしょうか。
簡単ではないでしょう。
理由は単純です。
巡航力とは、長時間にわたって高いペースを維持する能力だからです。
5kmや10kmのレースでは、スタートやゴールを除けば、ほとんどの時間を巡航ペースで泳ぎ続けます。
その能力を高めるためには、実際に巡航ペースで泳ぐ時間も必要になります。
もちろん、タバタ式トレーニングによってVO2maxや高強度への適応は期待できます。
しかし、巡航力そのものは別の能力です。
300mや500mを反復するトレーニングは、巡航力を高める方法の一つです。
それはレース中に最も長く使う能力を鍛えるためです。
社会人スイマーにとって、十分な練習時間を確保することは簡単ではありません。
だからこそ短時間で終わる高強度トレーニングには大きな魅力があります。
しかし、どれだけ効率の良いトレーニングでも、長距離レースに必要な巡航力を完全に代替することは難しいでしょう。
結局のところ、
巡航力は巡航ペースで泳ぐことによって作られる。
そう考える方が自然ではないでしょうか。
もちろん、トライアル選手や日本選手権レベルの選手には、VO2maxやスピード能力も重要になります。
しかし、その能力も高い巡航力の上に成り立っています。
OWS競技レベルによって優先すべき能力は違う
ここまで読んで、
「では、VO2maxは必要ないのか?」
と思われた方もいるかもしれません。
しかし、競技レベルによって答えは変わってきます。
一般選手の場合、レースで失速する原因の多くは巡航力不足です。
そのため、まず優先すべきはLT1領域の巡航力を高めることでしょう。
一方で、トライアル選手や日本選手権レベルの選手になると状況は変わります。
高い巡航力を持つ選手同士が競い合うため、
- スタート直後の位置取り
- ブイ回りの加速
- 集団のペースアップへの対応
- ゴールスプリント
といった場面で差が生まれます。
ここではVO2maxやスピード能力が大きな武器になります。
スタート直後から高い強度で泳ぎ、先頭集団に残り続ける能力は、巡航力だけでは説明できません。
高いVO2maxやスピード能力があってこそ可能になる場面もあります。
しかし、OWSの結果はVO2maxだけで決まるわけではありません。
巡航力、フォームの再現性、レース展開への対応力など、多くの能力が組み合わさって結果につながります。
重要なのは、トップ選手も巡航力を土台としているということです。
高いVO2maxは、高い巡航力の上に積み上げられています。
競技レベルによって必要な能力は変わります。
だからこそ、現在の自分に不足している能力は何か、そして今優先して鍛えるべき能力は何かを見極めることが大切なのではないでしょうか。
まとめ|あなたのレベルで今優先すべき能力は何か
VO2maxは重要な能力です。
競技レベルが上がるほど、その重要性は高くなります。
特にトライアル選手や日本選手権レベルでは、スタート直後の位置取りや集団のペース変化への対応、ゴールスプリントなどでVO2maxやスピード能力が武器になります。
しかし、OWSの結果はVO2maxだけで決まるわけではありません。
レースの大部分を占めるのは巡航です。
そのため、多くの選手にとって最も重要なのは、まず巡航力を高めることではないでしょうか。
一般選手であればLT1領域の巡航力。
上位入賞を目指す選手であればLT2付近の巡航力。
そして、その土台の上にVO2maxやスピード能力を積み上げていく。
そのように考えると、トレーニングの優先順位も見えてきます。
VO2maxは重要か。
答えは「重要である」です。
しかし、今のあなたにとって最優先の能力かどうかは別の問題です。
レースで失速する原因は何でしょうか。
最後までフォームを維持できていますか。
巡航ペースを維持できていますか。
それとも、ペース変化やスプリントに対応できないのでしょうか。
現在の自分に不足している能力は何か。
そして、今優先して鍛えるべき能力は何か。
その答えは、選手一人ひとりで異なるのかもしれません。
